デヴィッド・ボウイは50歳という年齢に達し、円熟味を増したアルバムをリリースするかと思いきや、「アウトサイド」より激しいアルバムを発表しました。
それが「アースリング」です。
ドラムンベースの攻撃的なビートはデヴィッド・ボウイには似合わないようにも思えるのですが、このアルバムが駄作だと言うことでは決してありません。
むしろ実験的でありながら高い完成度を誇るボウイらしいアルバムに仕上げられています。
とはいえ、昔からのボウイファンには少し居心地の悪さがあるかもしれません。
私にしても「アワーズ」「アウトサイド」「アースリング」の中では「アースリング」だけが異端のように感じてしまいます。
アルバムを通してサウンド重視
チベット仏教に傾倒した昔に戻ったようなタイトルの曲もあるので、新しいサウンドを取り入れただけのアルバムではありません。
しかし、全体的にはダンスチューンで少し落ち着かなさが残ります。
このアルバムは音楽の嗜好によって好き嫌いが分かれるでしょう。
Earthling
- Little Wonder
- Looking For Satellites
- Battle For Britain (The Letter)
- Seven Years In Tibet
- Dead Man Walking
- Telling Lies
- The Last Thing You Should Do
- I’m Afraid Of Americans
- Law (Earthlings On Fire)
デヴィッド・ボウイのボーカルは他のアルバムでは強烈な存在感を放っていますが、このアースリングではサウンドに負けているように感じます。
「The Last Thing You Should Do」は、いくらシャウトしようともボウイのボーカルは素直過ぎるように聞こえてしまいます。
しかし「I’m Afraid Of Americans」などはしっかりとボウイのボーカルが曲を支えています。
そうした印象がこのアルバムを不安定なものにしてるのかもしれません。
このアルバムからの1曲は…
このアルバムは全体のサウンドの強烈さから、1曲1曲の個性が失われているように思えます。
そのため、印象に残る曲が少なく、1曲を選び出すのが難しいアルバムのように感じました。
何度も聞き返しました。
私が1曲を選ぶとするなら「Seven Years In Tibet」だと思います。
この曲はリーブス・ガブレルスのギターが最高のパフォーマンスを発揮しています。
おとなしめのボウイのボーカルとの対比が素晴らしいメリハリを生んでいます。
……
さて、皆さんはいかがでしょうか?
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コメント
こんばんは。今回のアルバムレビューもLinさんならではの独自の視点で大変勉強になります。確かに冷静に聴いてみると陽性が強く、総合的には少しボウイらしさが足りない(ボーカルがボウイでなくてもクオリティが変わらない?)のかもしれませんね。私などはミーハーだったので、このアルバムが出た際には、ポップさと実験精神のバランスに感動してしまったものです。そんな驚きの思い出を込めて、PVもユニークだったオープナーのLittle wonderをチョイスいたします。
さむたいらさん、ありがとうござます。
私はこのアルバムは「アワーズ」から遡る形で聴いたので、「アウトサイド」や「ブラック・タイ・ホワイト・ノイズ」と同時期に聴いています。
それぞれのアルバムが特徴を持っていて、デヴィッド・ボウイのすごさに圧倒されました。
そうですね、選ぶのが難しいですが「Looking For Satellites」にします。
別件ですが、英国で「Baal」がやっとDVD化されました。
日本盤の発売を期待してます。
aladdindogs さん、「Baal」まだ観たことないので、私も日本版希望します。
ワンコードでひたすら攻めるlawがお気に入りです。
J さん、「アースリング」を聞き返すと50歳でこれをやったボウイに圧倒されます。