集英社の創業90周年企画として全集「冒険の森へ」が刊行されています。
全20巻を予定していて既に16冊が発売中です。(2016.8月現在)
この全集はジャンルを問わず名著を集めたもので、単独作家の全集ではありません。
1巻ごとにテーマを変えて編纂していくものです。
編集委員には「逢坂剛」「大沢在昌」「北方謙三」「船戸与一」「夢枕獏」が名を連ねています。
彼らが選ぶものが面白くない訳はありません。
第4巻「超常能力者」
超常能力者 (冒険の森へ傑作小説大全 4) image by Amazon
この全集の中で最もSF色の強いものが、このほど発売された「超常能力者」です。
長編小説
収録される長編小説は以下のようになっています。
- エスパイ:小松左京
- 黄金伝説:半村良
この全集は650ページに近いページ数となっていますので、上記の長編はフルに収まっています。
小松左京の「エスパイ」も半村良の「黄金伝説」もどちらも既に読んでいました。
「エスパイ」は角川文庫で20年以上前に、「黄金伝説」は講談社文庫で15年以上前に読んだ作品です。
小松左京の「エスパイ」は氏の作品には珍しくエンタテイメント性の強い作品でした。
「黄金伝説」は半村良の代表作です。
既に小説の記憶は薄れてしまいましたが、どちらも夢中で読んだことを思い出します。
……
さらに短掌編が最高のラインアップになっています。
ショートショート&ショートストーリー
ショートショート&ショートストーリーは大好きな星新一、眉村卓らの作品が掲載されています。
- 超能力者:星新一
- 月世界制服:北杜夫
- 触媒人間:阿刀田高
- ピーや:眉村卓
短編小説
短編小説は筒井康隆と平井和正の作品が掲載されています。
- 水蜜桃:筒井康隆
- エスパーお蘭:平井和正
- 大きな引き出し:恩田陸
- 燔祭:宮部みゆき
収録された小説、作家のラインナップを見ただけでも、ただ者ではない全集と分かるはずです。
さらに巻末には夢枕獏の寄稿があって、これが泣けます。
帯に抜粋が掲載されています。
筒井康隆からは森羅万象を面白がる力を、半村良からは物語の骨太さを、平井和正からは情念を文体に乗せて原稿用紙に叩きつけてゆく悦びを教わった。
出典:解説「半村良、小松左京に唸った日々が蘇るぞ」夢枕獏
この一文を読むだけで日本SFへの思いが伝わるはずです。
これ以上の解説は必要無いでしょう。
1960年代のSF作家たちのファンならこの本は宝物になるはずです。
既に読んだ作品も未読の作品も、じっくりと読み進める期待が膨らんでいきます。
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コメント
「冒険小説の時代」(北上次郎)を片手に一番熱心にその種の小説を読んでいたのは多分、80年後半くらいだった記憶しています。今回の小松左京、半村良等のSF は
もう少し前だったかもしれません。、
この全集、再読・未読も含め気になりながら高いということもあり手をだしていません。
(もう目の前なのですが・・)老後の楽しみにしておこうかなと。
たこべいさん、北上次郎ファンなんですね。
残念ながら、この全集に北上次郎の作品は掲載されないようです。
私はこの全集を買うのは今回紹介した4巻だけになると思います。
長編は2つとも読んでいますし、短編も数編読んでいます。
とにかく夢枕獏の解説に共感して、この本を買ってしまいました。
全巻揃えるには高額だと思います。
平井和正全集が出るとしたら、どんなに高額でも手に入れようとするのですが…