ぼくは暇をもてあましていた。
DVDレンタルショップでアニメ映画でも借りようと久しぶりにレンタルショップへ足を運んだ。
最近のアニメはあまり見てないのだが、以前はアニメ映画をたくさん見ていたものだから、懐かしい作品ばかりまとめて借りてきた。
その一つが「幻魔大戦」だったのだ。
という訳で、少年は「幻魔大戦」を見ることになります。(毎度、陳腐な出だしですみません)
映画「幻魔大戦」(1983年公開)のこと
この作品は角川映画で角川書店のメディア戦略全盛の時代の作品でした。大藪春彦の「汚れた英雄」や「蘇る金狼」なども同時期の作品のはずです。
監督はりんたろう、銀河鉄道999と同じ監督さん。「ハルマゲドン接近」のキャッチコピーが懐かしいです。
キャラクターデザイン:大友克洋、音楽監督:キース・エマーソン、主題歌「光の天使」はローズマリー・バトラーが歌っています。
汚れた英雄(草刈正雄が主演)の「Riding High」もこの人です。結構好きでした。
DVDを見ると原作として、平井和正・石ノ森章太郎がクレジットされています。しかし平井和正はこの大友デザインや「目覚めよ光の天使-サイオニクス戦士たち!」というキャッチコピーが気に入らず、こきおろしていました。「もっと原作に忠実な作り方もあったのではないか」と嘆いています。
私も大友克洋のキャラクターデザインに違和感を覚えました。原作ではルナ王女とともにニューヨークに赴いた「サイボーグ戦士:ベガ」の頭が人間の形状をしていなかったからです(土偶みたい)。それに、こういってはなんですが、どの登場人物も「不○工」です。東丈は天使の生まれ変わりなのだから、これはないのです。(どこかで読んだ気が…)
しかし、私の感想とは裏腹に、原作を読んでいない映画オンリーの視聴者からは好意的な意見が多かったのを覚えています。原作小説を読んでイメージ化がなされていなければ、アニメーション映画自体の完成度は高かったということなのかもしれません。
原作コミック「幻魔大戦」(1967年連載開始)のこと
原作コミックの「幻魔大戦」は石ノ森章太郎(当時:石森章太郎=いずみあすか)との共著で、2巻まで発売されています。髑髏の月が地球に接近する突然のエンディングは人気を得られなかったコミックの急な打ち切りにあったためのようです。しかし、今読み返すとあのエンディングの絵はかなりインパクトがあって、名場面として心に残ります。
映画公開時の原作小説
幻魔大戦は角川文庫版と徳間ノベルス版の双方が同時進行中であり、幻魔大戦の文庫カバーは16巻から18巻まで大友デザインのものに変更されています。
ストーリーは東丈が失踪してしまって残されたGENKENが危機的状態に陥っています。
また、真幻魔大戦の世界でも東丈が失踪、秘書の杉村優里が異界を漂流する展開となっていました。
どちらも東丈の不在から新しいストーリーが大きくうねりはじめており、これからどうなるの?…という先が予測できない状態でしたので、2時間程度でプロローグからエンディングまでも見せてくれる映画という媒体に陳腐さを覚えました。
幻魔世界への招待
さて、幻魔大戦の世界はあまりにも膨張しすぎて収拾不能の状態に見えますが、一つ一つの作品自体は単体でも魅力があります。全てを読み切ろうとすると難がありますので、一つずつ攻略していって下さい。各作品の簡単なご案内をしておきますので、興味を覚えた作品を手にとっていただければいいのではないでしょうか?
なお、月光魔術團シリーズに幻魔大戦DNAとタイトルされた作品群がありますが、これは別物と捉えいています。
コミック版幻魔大戦
全2巻の傑作です。このコミック版を「招待」の中に含めるかどうか迷いましたが、この作品がないと幻魔大戦世界が収束しないので、是非読んでみて下さい。
新幻魔大戦
この作品も石森章太郎氏との共著。1971年にSFマガジンに連載された作品です。舞台は未来世界から江戸時代にまで及んでおり、壮大なスケールで展開しています。主人公がタイムリーパーであることから、幻魔大戦の世界と新幻魔大戦世界を産み落とすきっかけになっています。
エンディングは次の作品を期待させるものになっていますが、完結作品と言えなくもないと思います。
幻魔大戦(ハルマゲドン)
1巻から3巻までは原作コミックのストーリーを再現していますので、SF的なストーリーを期待して大丈夫です。しかし、4巻からはGENKENという団体の設立に物語が移行してしまいますので、「宗教じみてきた」との批判が分出する内容となっています。ストレートなSF小説を期待しなければ、ストーリー展開にドキドキしながら読めると思うのですが…
幻魔大戦シリーズ(全20巻)からハルマゲドンシリーズ(全3巻)へとタイトルは変わりますが、ストレートな続編になっています。
真幻魔大戦
現代・奈良時代・古代ギリシャ・超古代ムウ・完全な異世界(犬の世界)とさまざまな世界を舞台に展開される、スリリングな作品です。全く先が読めません。現代編で東丈が活躍しているストーリーでは救世主を生み出すプロジェクトとして追えたのですが、ニューヨークへ舞台を移してからは物語の世界観が変遷してしまって、ジャンルのない小説と化しています。私はこの作品が一番好きです。
新幻魔大戦から真幻魔大戦の順に読んでいけば分かりやすいと思っています。
ハルマゲドンの少女
東三千子にスポットをあてたシナリオノベル。幻魔大戦の世界と真幻魔大戦の世界を繋げる役目を持った作品です。東丈は不在ながら、東丈の転生存在との出会い・ムウ世界探訪・滅亡寸前のニューヨークの描写等、見所がいっぱいです。さまざまな時空を変遷するこの物語は平井和正版の「時をかける少女」(筒井康隆)なのではないかと思います。
幻魔大戦deep
家族版幻魔大戦?(どこかでそんなキャッチコピー使っていたような…ファミリー版だったかな?)…
サンシャイン・ボーイとか斎天大聖とか今までに無かったキャラクターで物語が構成されていくので、東丈の存在が薄くなったように見えて、愕然とします。だが、後の重要なキャラクター「雛崎みちる」を生むことになる。東丈の家族創世物語としてみると楽しめます。
幻魔大戦deepトルテック
”東丈の娘” 雛崎みちるを主人公にしてハルマゲドンをいかに回避するかを描く。こう書くとハードな印象ですが、ABDUCTION(トルテック)シリーズと融合をとげてしまって、ライトな感じの小説になってます。全3部構成ですが、導入部分に「少女のセクソロジー」という「色っぽい」作品が配置されています。トルテックとはメキシコのシャーマニズム思想のことのようで、呪術や精霊と言った単語が多くなります。
(私もカルロス・カスタネダの本を購入しましたが、いまだに積ん読状態です。)
この作品のエンディングでコミック版幻魔大戦の幻魔司令官「シグ」の名が登場し、小説的な手法で、幻魔世界はループ、終焉を迎えることに…? (私は完結作品と考えています。)
以上、上手くまとめられたかどうか分からないですが、どの作品からでもいいので手に取ってみて下さいね。
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