平井作品の初期、平井先生自身が「人類ダメ小説」と名づけていた。
「死霊狩り」や「ウルフガイシリーズ」がそうだ。
また「虎」をあつかった様々な作品群もそうであり、「サイボーグ・ブルース」もそうだと思う。
死霊狩り第3部のあとがき
死霊狩り(ゾンビー・ハンター)3 image by Amazon
「アダルト・ウルフガイ」や「死霊狩り」ではこれでもかと言うほど、人間の残虐性を浮き彫りにしている。
そのことで、主人公たちの輝きがいっそう増しているわけだ。
「死霊狩り」第3部のあとがきで語られているように、「闇夜のなかに星を懸命に探す作業」であったということだ。
「死霊狩り」はこの「人類ダメ小説」の象徴となる作品であり、3部作の終了と同時に、「人類ダメ小説」の終わりが宣言されている。
そして幻魔大戦の時代「浄化の時代」へと移行していったわけだ。
このとき非常に大がかりな変更が行われている。
平井作品の大きな流れの中で(現在も新たな潮流が押し寄せていると感じる)やはり初期の作品が好きである。
単なるノスタルジイのようでもあるが、旧作を読み返す毎に感動につつまれている。
(以上 2000.9.3)
追記
現実の世界では実際に「人類ダメ」な出来事が起きた。
2001.9.11同時多発テロのことである。
その衝撃は当時の記事にも現れている。
記事が短いので再録しておく。
人類ダメ・・・
アメリカでは同時多発テロ(9.11)によってワールドトレードセンターが崩壊した。ものすごい事件だ。小説や映画の世界より現実の出来事の方がすさまじいことが起きる。
ハイジャックされた航空機がビルに体当たりするなど誰が想像し得たであろうか?
平井作品は一時期「人類ダメ小説」といわれた事があるが、そんな小説世界を現実が飛び越してしまった。
狂信者達の「聖戦」がこのようなテロ行為を現出させたのだ(ろうか)。
あまりにも悲惨な事件は経済の危機、国家間の紛争をまねきまさにハルマゲドンの様相を呈している。
このような現実が「パールハーバー」のように虚構として再現されることも近い将来あるだろう。しかし現実がスピード感を増して空想を上回る事態は願い下げである。
参照:人類ダメ・・・
光のネットワーク
テロの驚異はアメリカ国民の結束を高め、90%にも及ぶ報復行動への支持を示している。
世界でもイギリス、フランス、ドイツでの迅速な対応が伝えられ、支援意識を高めた。
限りなく黒に近いビンラディンの拘束や暗殺だけで、この騒動は終結しそうにない。
世界に散らばったテロ組織の壊滅、テロの撲滅をめざし「インフィニット・ジャスティス」を掲げたアメリカではあるが、実際には宗教戦争の様相を呈しはじめた。
強大な驚異は人々の間に連帯意識を育てたが、それが報復というベクトルとなったとき、既に正義はない。「光のネットワーク」とは無縁のものである。
参照:光のネットワーク
この時期テロに注目していた。
サイバー・テロ
9/18、恐ろしいウィルスの発生が伝えられた。
おりしも同時多発テロの後だけにサイバー・テロの危険性が叫ばれた。
「 w32.nimda」がそのウィルスだ。当日、私の仕事関係でも問い合わせが殺到した。
ホームページを開いただけで感染するという恐ろしいもので、IISサーバーをねらった悪質なものだ。
マイクロソフト帝国の牙城を崩そうとでも言うのか?ウルフガイ・ドットコムの掲示板では、ウィルスの話題がいち早く取り上げられていた。
各種の掲示板が混在するサイトで、どこに何を書けばいいのか迷ってしまうほどだが、さすがに情報が早い。掲示板の威力だ。参照:サイバー・テロ
カオス
テロと戦争、アメリカとアフガニスタン、イスラムとキリスト、タリバンと北部同盟、ジハードとクルセイダー、空爆と物資投下、有色人種と白人、アラブと世界、宗教と政治。
様々な対立の中で正義はどこにあるのだろう?
どの勢力にも正義があり、歴史の流れの中で溜まりきったあかはどうにもこそげ落とすことができない。
終わりのない戦いは人々を不安に陥れ、出口が見えない。こんな人間世界を睥睨することのできる精霊はこの世に存在するのだろうか?
ハルマゲドンのさなか救世主は光臨するだろうか?こんな時は平井作品に頼りたい気持ちになる。
参照:カオス
© bluelady.jp
www.bluelady.jp – Recommended
by Amazon
コメント