image by University Libraries, Bowling Green State University
このロウというアルバムを最初に聴いたとき、僕は何故これがデヴィッド・ボウイの最高傑作と言われるのか、全く理解できませんでした。
この頃の僕は発表順にボウイのアルバムを購入し聴いていました。
ですから、ファンク・ソウルへ傾倒した「ヤング・アメリカンズ」、ソウルに西洋的な感覚を導入し洗練された音楽を極めた「ステイション・トゥ・ステイション」と順にアルバムを聴き、ボウイに心酔していきました。
しかし、このアルバム「ロウ」を聞いた時、あまりの音楽性の変化に戸惑いを覚えたのでした。
これは、発表当時のボウイをとりまく環境でも全く同じだったようです。
RCAも戸惑い、発表を遅らせたといいます。
アンビエントは苦手だった
デビッド・ボウイは1976年5月、ステイション・トゥ・ステイションツアーを成功のうちに終了し、イギー・ポップとともにシャトー・デルヴィル・スタジオ(「ピンナップス」を制作したスタジオ)に入ります。イギーのアルバム「The Idiot」をプロデュースするためです。
「The Idiot」の制作を終えるとボウイはスタジオにブライアン・イーノを呼び寄せ「ニュー・ミュージック:ナイト・アンド・デイ」と題した実験的な新作(ロウのこと)の制作を開始します。さらにトニー・ヴィスコンティーが加わり、イギー・ポップもバック・ボーカル等で協力しています。
既に「Another Green World」を発表していたイーノの音楽に感銘を受けたボウイは新しいアルバムにイーノを招き、シンセサイザーを使ったアンビエントなアルバムを作り上げようとしたのでした。
僕はそれまで、アンビエントに興味などなくボウイのこれまでの劇的なアルバムに感銘を受けてきました。そのため、陰鬱なアンビエント曲に拒絶反応をおぼえました。
この拒絶は実はボウイのアンビエントを集めたコンピレーションアルバム「All Saints」(このアルバムは真の傑作です!!)の発表まで続くことになります。
ロウを聴くためにアンビエントをのぞいたプレイリストを作って楽しんでいた。
CDでボウイに出会った僕は、このアルバムがA面、B面構成だと言うことを忘れがちですが、A面のみ(Speed Of LifeからA New Career In A New Townまで)を聴くと、そこまで違和感は感じません。
そこで、思い切って以下のプレイリストでかなり長い間聴いていました。
- Breaking Glass
- What In The World
- Sound And Vision
- Always Crashing In The Same Car
- Be My Wife
アンビエントをのぞいても、かなりふわふわした感じの楽曲が並びます。
でもこれらのボーカル曲は傑作揃いで、後のライブやベストアルバムでもよく取り上げられています。中でも「Be My Wife」は大好きな曲です。また「What In The World」はイギー・ポップとのデュエット曲です。
ベルリン3部作の開幕
前述したようにこのアルバムはパリ郊外のシャトー・デルヴィル・スタジオで大半の楽曲を収録していますが、ミックスはベルリンのハンザ・スタジオで行われています。
当時のボウイは前マネージャーのトニー・デフリーズとの裁判も抱えており、それが影響したのかもしれません。
とまれ、ハンザ・スタジオで完成をみたこのアルバムから3作品は、ほぼ同じ制作陣で制作されベルリン3部作として、デビッド・ボウイの頂点と語られるようになります。
シンセサイザーを取り入れたアート・ロックの傑作「ロウ」の発表は、パンクからニューウェイブへミュージックシーン自体を根こそぎ切り替えてしまった作品ともいわれ、ロック史に与えた影響は計り知れないものがあったのでした。
最後にひとこと、「ロウ」の功績はブライアン・イーノによるところが大きいと思われる方も多いと思いますが、アンビエントの曲でイーノとの共作曲は「Warszawa」のみだということを認識しておく必要があります。
「ロウ」というアルバムはまさにデヴィッド・ボウイの才能のなせる技だったのです。
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アンビエント集の傑作「All Saints」も合わせて聴いてみて下さいね。
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コメント
やまりんさん、こんばんは。
「LOW」ですね。私も、これが出た時は、始めは「ん?」って思いました。
6曲しか、入っていない大作「STS」から、打って変って短い曲ばかりで、半分は歌なし。
でも、POPなニューウェーブぽい曲(この時は、まだニューウェーブと呼ばれていなかったかも)と、芸術性と実験性の高いB面曲、明らかに一般受けよりも、ボウイフリーク受けする内容。
ボウイは、売れ線、自我の強いアルバムの両方を上手くレコード会社から、発表して来ましが、どちらかと言うと少し捻くれたボウイサウンドと言うものが多いと思います。
そして、多くのミュージックタレントが消えて行くなか、長く一線を保ち続けた歴史が彼を天才と認めさせました。
あっと、驚くような新しいサウンドを追求して来たボウイの作品の中でも、「LOW」は際立った作品でした。
aladdindogsさま
ありがとうございます。
もう、ベルリン3部作の記事を書き終えていますので、あと「スケアリー・モンスターズ」でボウイの全てのスタジオ・アルバムが書き終わってしまいます。
その後はコンピレーションやライブアルバムのことを書いていくつもりですが、ちょっと寂しいですね。
なにかビッグニュースや新作が早く出てくれるといいですね。
こんにちは。
ボウイ作品をじっくり時系列で聴き直しており、Lowまで来ました。
私が買おうとした時、日本ではEMIに所属していて、70年代の作品が買えず、中古屋で8千円くらいで買いました。
ついにボウイの傑作!という気持ちと、当時まだお小遣いでびくびくしながら、興奮して買った想い出があります。
今はベルリンで聴いてみたいなと計画しています。
ジミーさん、ベルリンとはいいですね。
ボウイの曲も空気感が違って聞こえるかもしれません。
「Christiane F.」のOSTもあわせて聴くといいかもしれません。
私はこの映画は未見ですが(注文しているんですが、まだ届いてないので)、ボウイのサウンドトラックは絶頂期のものなので、芸術性が高いです。
今日ベルリン時代の住所の辺りを探ってみました。
勿論当時の面影ないでしょうが、来年はLow発売40年でしたっけ?
絶対そこで聴きたくて。Christiane Fは、随分昔一度だけ見て、ちゃんとまた見たいです。サントラ探します!
Linさん、Dog in Spaceという映画ご存知ですか?
オーストラリアで起きたパンクブームでの映画なのですが、そこでもパンクス達にボウイは一目おかれた様子がわかります。
改めて彼の音楽に向き合って、引き込まれています。
色々情報くださって、ありがとうございます。
ジミーさん
ありがとうございます。
「ドッグ・イン・スペース」は見たことなかったのですが、ロッカーと恋人たちのストーリーのようですね。
興味あります。私も、この映画探してみます。
こんにちは。
デビッドボウイのことで検索していたら、こちらのサイトにたどり着きました。
参考に是非、リンクさせていただきたいと思い許可をお願いいたします。
alpaccaさん、はじめまして。
今後ともよろしくおねがいします。