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変化を追求し続けるデヴィッド・ボウイはジギー・スターダストとスパイダースの限界に気づき、これを封印します。
しかし、その後RCAからアルバム制作義務を果たすよう迫られてしまいます。
この時、ブライアン・フェリーがカバーアルバムをリリースするというニュースを聞き込んだボウイは、このピンナップスの企画を思いつきました。
スパイダースは解散していなかった。(ウッディー・ウッドマンジーとは決裂)
ハマースミス・オデオン公演で、デヴィッド・ボウイはジギー・スターダストとスパイダースを葬ったのですが、ミック・ロンソンとともにこのアルバムの制作に取り組むことになります。
ジギーの引退を事前に知らせず、ウッディー・ウッドマンジーとトレヴァー・ボルダーとの関係は悪化してしまいましたが、ドラムスのウッディー・ウッドマンジーをエインズレー・ダンバーに交替。レコーディングを開始します。
つまり、このアルバムはスパイダース(改)とボウイのアルバムなのですが、原曲にかなり忠実にカバーされているため、ジギー・スターダストとアラジン・セインの雰囲気は全くといっていいほど、感じられません。
私は、1960年代の楽曲になじみがあるはずもなく(生まれたばかりです)このアルバムの評価には困ります。
ボウイの歌声がかなり無理をしているようにも感じられます。
アルバムジャケットのエピソード
このアルバムの写真は、当時「ヴォーグ」誌の担当だったジャスティン・デ・ヴィルヌーヴが撮影しました。
彼は男性として初めてボウイに「ヴォーグ」の表紙を飾らせようと計画し、モデルのツィッギー(ジャスティンの恋人でもあった)とボウイを撮影しています。
デヴィッド・ボウイはできあがった写真を見て、アルバムのジャケットにすることを思いつきます。そしてこの写真がアルバムアートワークに使われました。
この写真は、ジャスティンの独断でピンナップスのアルバムのために提供してしまったという説と「ヴォーグ」で不採用になったためにボウイのアルバムに使われたという説があります。
(私は前者だと思っていますが…)初期のボウイのアルバムの中では際だったアートワークになりました。
カバーの名手:デヴィッド・ボウイ
デヴィッド・ボウイは様々なアーティストの曲を独自のセンスでカバーし、素晴らしい曲に再生させているのですが、このピンナップスでは原曲に近づけようとするあまり、ボウイの良さが活かされていないように思えます。
しかし、2曲好きなカバー曲があります。
一つは「Sorrow」(原曲はThe Merseysの曲):原曲よりかなりしっとりした曲に仕上がっています。
もう一つはライコ版のボーナストラック「Port of Amsterdam」(原曲はJacques Brelの曲):センチメンタルな感じの曲です。この曲は大好きです。
原点回帰を繰り返しながら変化を続けるボウイ
このアルバム「ピンナップス」はジギー・スターダストに疲れたボウイが原点回帰のために制作したアルバムです。
デヴィッド・ボウイはこれまで、このような試みを繰り返しています。
以下のアルバムがそうです。
- ピンナップス(Pin Ups)
- ティン・マシーン(tin machine)
- トイ(Toy)
「ティン・マシーン」ではライブアルバムを含めると3枚ものアルバムを制作しています。
「トイ」は正式に発表されてはいませんが、近年その音源が流出したため聴くことができます。「トイ」の以下の曲(ヒーザンのシングルに収められた曲もあります)が最高です。
- 「Conversation Piece」
- 「Shadow Man」
- 「You’ve Got A Habit Of Leaving」
- 「Silly Boy Blue」
- 「The London Boys」
これらの素晴らしい曲を連ねたアルバム「トイ」の正式発表を切望してやみません。
デビッド・ボウイはこのような原点回帰の試みを節目毎に繰り返しています。
変化のためには原点に戻ることが必要なのかもしれません。
最初はRCAの強制によるアルバム制作だったかもしれませんが、ピンナップスはデヴィッド・ボウイに原点回帰の重要性を発見させることになった重要なアルバムだったのです。
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コメント
やまりんさん、こんばんは。
「ピンナップス」のアルバム・ジャケットは、もともとは雑誌「ヴォーグ」の表紙の為に撮られましたが、あまりの出来の良さを気にいったボウイが、自分のアルバムにちゃっかり使用してしまった物でした。
ボウイは次の「ダイアモンド・ドッグス」でも、先にギー・ピラートを気にいっていたミック・ジャガーを出し抜いてアルバム・イラストに起用します。
まるで、ストーンズの方が、「イッツ・オンリー・ロックンロール」で真似をしたみたいになってしまいました。
まあ、それがボウイの真骨頂なのですが、モットやイギーに近いて、彼らの魅力的な部分を吸収して、ボウイ、バンパイア説なんてのも、ありましたから。
すみません、ストーンズの件は逆だったみたいです。
aladdindogs さま
おはようございます。
ボウイ・バンパイア説があったんですね。
当ブログに「ボウイ」「吸血鬼」で、たどり着く方がいらっしゃるので不思議に思っていました。
私は吸血鬼には妖しい魅力を感じます。
そのうち、ブログでとりあげようかな。と思ってます。
やまりんさん、おはようございます。
ボウイ〜吸血鬼は、多分映画「ハンガー」がらみだと思いますね。
また、色々資料を読み返した所、ガイ・ピラートの件は、両方が依頼していて、リリースはボウイの方が僅かに早かったと言う記実もあり、真相は分からなくなりました。
バンパイア説のひとつで、あまり知られていない興味深い記実があります。
今で言う、オネエロッカーのウェイン・カゥンティをメインマンが、ミック・ロンソンをプロデューサーにして、アルバム契約を約束していました。
その時のデモ曲をボウイに聴かせたそうですが、その中のひとつ「クィーンネイジ・ベイビー」は、曲調や、歌詞の内容が「レボル・レボル」にそっくりで、ボウイは直後に「レボル・レボル」を録音しています。
カゥンティはアイデアを盗まれただけでなく、メインマンとの契約も、アルバムのリリースも破棄されてしまいます。
その後、彼(彼女?)は別のプロダクションから、アルバムを出しましたが、成功はしませんでした。
aladdindogsさま
興味深い話ですね。
ウェイン・カゥンティは初めて知りました。 この人のビジュアルもすごいですね。
今では性転換して「ジェイン・カウンティ」になっているようです。
やまりんさん、1970年前半のボウイの交友関係では、表向きではルー、イギー、モットが知られていますが、裏向きでは、ダナ・ガレスピー、アマンダ・レア、アバ・チェリーがいて、協力関係もありましたが、半ば愛人でもあったようです。(ジェイン・カウンティも?)
アマンダ・レアも、ミュージック・スターを夢見たモデルでしたが(ロキシー・ミュージックのアルバム・ジャケットのモデルにもなっている)最後はサルバドール・ダリの元サヤに戻りました。
aladdindogsさま
うーむ。アバ・チェリー以外は知りませんでした。
私の読んだ本に書いてなかったか、記憶から飛んだか、分かりません。
(「Ava Cherry」は「The Astronettes Sessions」持ってます。同じ曲でもボウイ以外はダメだと思いましたが…
そういえば、「Holy Holy」の「The Man Who Sold The World (Live)」もボーカルが馴染めず、途中で聴けなくなりました…)
ダイヤモンドの犬記事の方にも何かありましたら、是非おねがいします。
以下がアドレスです。
https://8blue.net/bowie/post-8744
やまりんさん、もしまだダナ・ガレスピーの「ANDY WARHOL」を聴いていなかったら、ぜひ聴いてみて下さい。
ボウイ、ロンソン全面協力のグラムなサウンドはルルの「THE MAN WHO SOLD THE WORLD」「WATCH THAT MAN」より、カッコイイですよ。
aladdindogsさま
ありがとうございます。
なんとApple Musicにありました。
「Andy Warhol」いいですね!!
あっ、確か「DAVID BOWIE SONGBOOK」にも入っていましたよね。
やまりんさん、アマンダ・レアは、ディスコ曲などのレコードも出していますが、「1980フロア・ショウ」に出ている低音ヴォイスの妖しい女が、彼女です。
「ダイアモンドドックス」冒頭のほのナレーションに絡んでくる女の声も彼女です。
そうなんですか!
じゃ、知らないと恥ずかしいですね。
すみません。
Roxy Musicの「For Your Pleasure」のジャケットがアマンダ・レアとのことですが…
「For Your Pleasure」は持っておりました。