photo by CHRIS DRUMM
私が最初に出会ったマイクル・ムアコック作品は「火星の戦士 野獣の都」です。
マイクル・ケインを主人公としたシリーズものです。
この本を読んだ私はエドガー・ライス・バローズの「火星シリーズ」のパクリだと思いました。
当時の私(大学浪人の頃)はオマージュ作品などという言葉も知りませんでしたので、「SFはこんなもの」という思いを抱いたのでした。
ファースト・コンタクト:火星の戦士
最初の印象がそれほど良くなかったにも関わらず、この作品を読了してしまいました。「火星の戦士 野獣の都」は松本零士さんの表紙が印象的でした。
そして、シリーズの続刊「蜘蛛の王」「鳥人の森」も読み通してしまいました。
すでに記憶は薄れてしまいましたが、かなり面白い作品と記憶しています。
→松本零士さんの表紙:「火星の戦士野獣の都 (ハヤカワ文庫 SF 57)」(Amazon)
そこから、マイクル・ムアコックという作家は常に気になる存在になったのでした。
当時の本は手放してしまいましたが、現在これらの作品は合本になっています。
アンチ・ヒロイック・ファンタジー:紅衣の公子コルム
次に手に取ったムアコックの作品といえば、「剣の騎士」コルムを主人公としたシリーズです。
当時大学生だった私は、グイン・サーガを読み始めていたので、ヒロイック・ファンタジーという言葉にも慣れていました。
しかし、マイクル・ムアコックの作品は「アンチ・ヒロイック・ファンタジー」といわれていました。
このジャンルはその頃の解説で紹介されていたものだと思いますが、ヒーローらしくないヒーローが主人公となったファンタジーというくらいの認識でした。
「剣の騎士」以外にも、マイクル・ムアコックの作品は天野喜孝さんが表紙を飾ることが多く、全巻持っていたのですが、引っ越しを重ねるうちに全て手放すことになってしまいました。
→天野喜孝さんの表紙:剣の騎士―紅衣の公子コルム1 (1982年) (ハヤカワ文庫―SF)(Amazon)
2巻目の表紙が最もすきです。
→天野喜孝さんの表紙:剣の女王―紅衣の公子コルム2 (ハヤカワ文庫 SF 476 紅衣の公子コルム 2)(Amazon)
全て、新版を購入し直しましたが、やはり、天野喜孝さんの表紙の方がムアコックの作品にマッチしているように思います。
エターナル・チャンピオン(永遠の戦士):メルニボネの皇子
マイクル・ムアコックがエターナル・チャンピオンのコンセプトを持ち出したとき、私はムアコックの信奉者になっていました。
もともと、多元宇宙モノに親和性が高かったため、ほとんど全てのムアコック作品のヒーローがエターナル・チャンピオンと呼ばれる存在の化身であるという設定が表れたとき、作品に夢中になりました。
代表的なのはエルリックを主人公とする「メルニボネの皇子」です。
「ストームブリンガー」と「モーンブレード」の設定も非常に魅力がありましたし、後に知ることになる「タネローン」の設定もとても好きになりました。
以下、ウィキペディアからの抜粋です。
概要
ムアコックが戦士エレコーゼを主人公とした作品を書いた際、彼はこれまでに創造した主人公たち、メルニボネの最後の皇帝エルリック、ヴァドハーの最後の生き残りである紅衣の公子コルム(Corum Jhaelen Irsei)、ケルン公ドリアン・ホークムーンなどが、皆「エターナル・チャンピオン」と呼ばれる存在の化身であるという設定を付与した(他に「火星の戦士」マイケル・ケイン、ジェレミア・コーネリアス(Jeremiah Cornelius)、カール・グロガウアーなど)。
そして、各人物は己の人生しか記憶していないが、エレコーゼのみはすべての人格を(完全にではないが)記憶しているとして、エレコーゼを全作品の中心人物としたのである。
永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)は、『天秤』(『法』と『混沌』の均衡を保つ存在)の代理として、法と混沌のバランスが崩れた際にどちらかの側に顕現し、バランスを取るために戦う戦士であり、永遠に転生を繰り返すことを宿命づけられ、多元宇宙のサイクルすべての転生を戦いに捧げる存在として書かれている。
(以下、省略)タネローン
エターナル・チャンピオンの物語に登場する永遠の都。多元宇宙の中心に位置し、不変の存在であるとされる。その特性から、永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)の異なる顕現である複数の英雄たちが同時に存在することを許された場所である。多くの世界では象徴的な存在とされているが、エルリックの属する世界では現実に存在する都市として登場する。
(以下、省略)「エターナル・チャンピオンシリーズ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)。2015年5月26日15時(日本時間)現在での最新版を取得。
エルリックやエレコーゼのシリーズが早川文庫で登場したときは既に社会人となっていましたので、残念なことに仕事に忙殺されて全てを読むことが出来ていません。
当時はやはり天野喜孝さんが表紙を飾っていました。
→天野喜孝さんのエルリックの表紙:メルニボネの皇子 (ハヤカワ文庫 SF―エルリック・サーガ (587))(Amazon)
→天野喜孝さんのエレコーゼの表紙:永遠のチャンピオン (ハヤカワ文庫 SF 529―エレコーゼ・サーガ1)(Amazon)
現在、購入可能なマイクル・ムアコックの作品を全巻天野喜孝さんの表紙で再版していただけたら、きっと全巻購入してしまうでしょう。
永遠の戦士エルリック
黒の剣「ストームブリンガー」に使役される存在。メルニボネ帝国最後の皇帝の運命は?
永遠の戦士エレコーゼ
永遠の戦士というコンセプトを明らかにした最初の作品。
永遠の戦士フォン・ベック
現実世界から異世界へ迷い込むウルリッヒ・フォン・ベック。
ルーンの杖秘録:ホークムーン
創元推理文庫にもマイクル・ムアコックの作品「ルーンの杖秘録」(ドリアン・ホークムーンが主人公)があります。
こちらの著者名は「マイケル・ムアコック」となっています。
おそらく私が高校時代から創元推理文庫の作品は出版されていたのではないかと思います。
知ってはいたのですが、何故か作品に触れることはありませんでした。
この作品を購入したのは新版になってからです。
ブラス城年代記
ルーンの杖秘録の後日譚
マイクル・ムアコックの作品には「魔力」がある
「エターナル・チャンピオン」はマイクル・ムアコックが作品を発表しはじめた当初からの設定ではなく、途中からの設定であるために、かなり無理があると思っています。
エレコーゼやエルリックについては違和感を感じませんが、マイクル・ケインが登場する「火星の戦士」シリーズやカール・グロガウアーが登場する「この人を見よ」を読むと世界観が完全に異なっているように思えるのです。
しかし、そのことがムアコック作品の魅力を減衰することはなく、作品に触れることは、「法」と「混沌」の均衡を見いだす作業として楽しめるようになります。
ムアコックの作品はタイムマシンや物質移送機といったSF定番のガジェットを持ち出すことも多いですし、設定自体が古くさいものもありますが、一度作品に触れてしまえば、のめり込んでしまう魅力に溢れた作品世界だということに間違いありません。
冷静に視れば陳腐さを感じてしまう作品コンセプトも、マイクル・ムアコックの手にかかれば、ある種の魔力が読者を吸引して離さなくなってしまうのです。
その他の作品
この人を見よ
ヒューゴー賞を受賞した傑作。タイムマシンによってイエス・キリストの存在を追うグロガウアー
→この人を見よ (ハヤカワ文庫 SF 444)(Amazon)
グロリアーナ
世界幻想文学大賞受賞作品
白銀の聖域
氷に覆われた未来の地球を舞台に幻の都市ニューヨークを目指す
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