Photo by Don Kasak
デヴィッド・ボウイで最もキャッチーな曲のひとつ「アッシュズ・トゥ・アッシュズ(Ashes To Ashes)」を含む最高のアルバムの一つが「スケアリー・モンスターズ(Scary Monsters (And Super Creeps))」です。(もう一つは「ヒーローズ(”Heroes”)」)
スケアリー・モンスターズ <2017リマスター> image by Amazon
このアルバムは過去のボウイを総括するようなアルバムで、「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」はその象徴といえるでしょう。
このアルバムはオープンリールテープのキュルキュルという音で最初と最後を飾る、アーティスティック作りになっています。
そして、ロバート・フリップのエッジのきいたギターやボウイのボーカルのハードさが特徴の一枚になっています。
- オープニング曲「イッツ・ノーゲーム(It’s No Game (Part 1))」はミチ・ヒロタさんの切り裂くような朗読から始まる
- タイトル曲「スケアリー・モンスターズ(Scary Monsters (And Super Creeps))」
- タイトル曲で最高に盛り上がった瞬間、 切ないメロディーが始まる。 代表曲「アッシュズ・トゥ・アッシュズ(Ashes To Ashes)」
- さらに進化したボウイ流のファンク 「ファッション(Fashion)」
- 「スクリーム・ライク・ア・ベイビー(Scream Like A Baby)」はアバ・チェリーに提供した曲
- 「ビコーズ・ユアー・ヤング(Because You’re Young)」はこのアルバムで唯一、ピート・タウンゼントのギター・プレイが聴ける
- そして落ち着いたアレンジの「イッツ・ノーゲーム(It’s No Game(Part 2))」で、最高のアルバムのエンディングを迎える
オープニング曲「イッツ・ノーゲーム(It’s No Game (Part 1))」はミチ・ヒロタさんの切り裂くような朗読から始まる
オープニング曲「It’s No Game」はミチ・ヒロタ(廣田三知)さんの「シルエットや影が革命を見ている。もう天国の自由の階段はない。」という日本語が被さるようにスタートします。
少し意味不明ですが、ボウイのボーカルと相まってハードでエッジの効いたアルバムにふさわしいオープニング曲になっています。
タイトル曲「スケアリー・モンスターズ(Scary Monsters (And Super Creeps))」
2曲目の「Up The Hill Backwards」はすこしスローでトーンダウンしますが、エンディングのロバート・フリップのギターの盛り上げが、この3曲目のタイトル曲に上手く繋げてくれます。
さらに、この曲でもフリップのギタープレイが最高に荒々しくトリッキーでもあり、ややトーンを下げたボウイのボーカルを引き立てます。
タイトル曲で最高に盛り上がった瞬間、 切ないメロディーが始まる。 代表曲「アッシュズ・トゥ・アッシュズ(Ashes To Ashes)」
この曲のメロディーはデヴィッド・ボウイの曲では特異であり、代表的なものとなりました。ギター・シンセによるあまりにも美しいメロディーは「The Next Day Extra」の最長の曲「Love Is Lost」でも披露されています。
この曲に「アッシェズ・トゥ・アッシェズ」のメロディー・ラインが登場したときは近年のボウイ作品では一番の歓喜の瞬間でした。
「アッシュズ・トゥ・アッシュズ」はボウイの代表曲「スペイス・オディティ」で登場したトム少佐はジャンキーだったという落ちでも有名です。
このアルバム中最も美しい曲はボウイ史上、傑出した名曲になりました。
さらに進化したボウイ流のファンク 「ファッション(Fashion)」
「ファッション」のフレーズや「ピピッ」が耳に残る、この曲はロウやヒーローズのようなアートロック作品を発表した後でも、過去に親しんできたファンク風のものができることの証明のようです。
ファッションを追うことやダンスへの皮肉はボウイが得意とするカウンターカルチャーを表現した曲になっています。
「スクリーム・ライク・ア・ベイビー(Scream Like A Baby)」はアバ・チェリーに提供した曲
どこかで聴いた曲と思っていたら、アバ・チェリーに提供した曲「I Am A Lazer」が元になっています。
アバ・チェリーの弱いボーカルでは感じられないダイナミズムをボウイ独特の歌唱から感じることができます。
「ビコーズ・ユアー・ヤング(Because You’re Young)」はこのアルバムで唯一、ピート・タウンゼントのギター・プレイが聴ける
曲のオープニングはピート・タウンゼントのギタープレイが聞き所です。
このアルバムでタウンゼントが参加している唯一の曲です。
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティもタウンゼントのギターがこの曲のみになっていることを不思議がっていました。
そして落ち着いたアレンジの「イッツ・ノーゲーム(It’s No Game(Part 2))」で、最高のアルバムのエンディングを迎える
この曲がオープニングとエンディングに登場する理由は分かりませんが、16歳の時に作った曲であるだけに、強い思い入れがあったのかもしれません。
※原曲は16歳の時に作った「タイアード・マイ・ライフ(Tired My Life)」
ここまで、見たようにこのアルバムは過去からのボウイを総括する最高のアルバムです。
そして、80年代以降もミュージックシーンにおいて、ボーイの存在感は増していくばかりに思われたのでした。
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コメント
やまりんさん、こんばんは。
このアルバムが出る少し前に、雑誌でトニー・ヴィスコンティが、「ボウイの次のアルバムはニューヨークで録音されていて、かなりロックなものになる」と言っていたのを思い出します。
「TND」の時も同じ様な事を言ってましたが、この時のコメントは、実験的な「ロウ」「ヒーローズ」と来て「ロジャー」もかなりPOPで軽い乗りでしたから、分かる気もしますね。
ボウイ特有の少し捻くれた曲にフリップのギターがさらに捻りを加えていますが、確かにロック色が強いです。
その中にあって「アッシェッズ・トゥ・アッシェッズ」はPOPな名曲で歌詞にもトム少佐が出て来ますが、PVでもそれらしい演出と「スペイスオディティ」のアルバム裏ジャケのピエロとお母さんが出て来て、当時はニンマリさせられました。
全アルバム解説、ご苦労様でした。
また、次の記事を楽しみにしてますね。
aladdindogs さま
ありがとうございます。
ボウイ記事を書き始めたのが3月のことでしたので、全スタジオアルバムの記事を書き終えるのに、半年以上かかってしまいました。
今までよく知らなかったボウイのことが、ちょっとだけ分かるようになった気がします。
もう1本次の記事も書き上がっていますので、そのうちアップします。
これからもゆっくりとページが増えていくと思います。
よろしくお願いします。
やまりんさん、「Five Years」のリリース直前に、新曲のニュースが届きましたね。
どうやらテレビシリーズのサントラみたいですが、新曲は嬉しいですね。
aladdindogsさま
新曲の情報ありがとうございます。
突然だったので驚きました。
テレビドラマのオープニング曲でテーマ曲ということなので、ドラマをみることができる欧州の人たちがうらやましいですね。
ドラマがスタートする11月には私たちも曲を聴くことができるでしょうか?
この曲を契機に1ページブログ記事をアップしたいと思いますが、情報が少なすぎて「どうしよう」と悩んでいます。
やまりんさん、アルバムになるか、シングルになるかは分かりませんが、サントラは多分発売されると思います。
舞台劇の件もありますので、年末から来年前半にかけて、BOWIEの新しい音楽が聴けるでしょう。
楽しみです。
最初と最後の効果音は、オープンリールのテープではなく、映写機のフィルムの音です。テープデッキはカチカチいいません。あれはフィルムをコマ送りしている音です。革命を見ている、という歌詞とリンクしています。
Ayumiさん、ありがとうございます。
気づきませんでした。
今後とも、よろしくです。