Photo by アルム バンド
豊田有恒のファンである。
それは私が平井和正のファンであったからだ。
平井和正は「エイトマン」のテレビアニメのシナリオライターとして豊田有恒を招聘したことを常々語っていた。
無二の親友だったのだそうだ。
それは今回紹介する「「宇宙戦艦ヤマト」の真実 – いかに誕生し、進化したか」を読んでも明かであった。
豊田有恒の視点で平井和正が語られているのだ。
私は平井和正の「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」を読むと同時に豊田有恒の「日本武尊SF神話シリーズ」を読んだ。
共通点と言えば本のカバーが生賴範義だったというだけで、ジャンルすらも違う小説であったが、どちらも熱狂して読みふけった覚えがある。
それ以来、豊田有恒のファンなのである。
「宇宙戦艦ヤマト」の真実 – いかに誕生し、進化したか
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「宇宙戦艦ヤマト」は私が小学生の頃から好きだった作品だ。
そして今もなおリメイク作品の登場を喜んでいたりする。
こんなに息の長い作品は「宇宙戦艦ヤマト」以外に存在しないであろう。
しかし、「さらば宇宙戦艦ヤマト」以降の蛇足のような映画公開を歓迎することは出来ず、学生ながらもヤマトは商業主義者の餌食になったと考えていた。
長く続くことを決して歓迎していたわけではなかったのだが、出渕裕が手掛けた「宇宙戦艦ヤマト2199」は「いつまで経ってもヤマトはいいな」という気持ちにさせてくれた。
……
作品として忘れることの出来ない「宇宙戦艦ヤマト」だが、西崎義展と松本零士の著作権裁判という負の歴史もつきまとう。
結果は松本零士が敗訴してしまった。西崎義展に著作権がゆだねられたのだ。
私はこの裁判を支持することは出来ない。
著作権者として名を連ねるべきは松本零士と豊田有恒であろうと思っている。
この本を読む前からだ。
……
「宇宙戦艦ヤマト」には前述したように不可解なことがある。
つまり、「さらば」以後もなぜ多数の続編が作られたのか、著作権者は本当に西崎義展だったのかということだ。
これらの背景を「アステロイド6」という設定原案を提供し「宇宙戦艦ヤマト」の制作に最も近かった豊田有恒の立場から明確にしているのが本書である。
「宇宙戦艦ヤマト」の往年のファンも「宇宙戦艦ヤマト2199」からのファンも、この本には興味がわくはずだ。
……
豊田有恒が原案として提出した「アステロイド6」がどうのようなものだったのか、それがどうやって「宇宙戦艦ヤマト」になっていったのか、石津嵐が「宇宙戦艦ヤマト」をノベライズした経緯、西崎義展が豊田や松本らのアイデアをどのように私物化していったのか…等々、豊田有恒の手によって真実が語られている。
豊田有恒は松本零士を「おおよそ著作権者」とよび、西崎義展の功績を認めた上で、一部の記述では西崎のことを「クリエイターの生き血を吸う吸血鬼のような」と表現している。
原案のアステロイドシップを戦艦大和をベースにした宇宙戦艦として設定しただけでも松本零士の功績は巨大であり、この物語の根幹をなすものである。
「宇宙戦艦ヤマト」は、松本零士ばかりでなく、数多くのクリエイター達によって生み出された成果だ。しかし、特殊な才能をもった一人のプロデューサーに簒奪されてしまった作品だったのである。
本書は「宇宙戦艦ヤマト」に関わった全てのクリエイターたちへの怨歌(レクイエム)ともなっている。
……
「宇宙戦艦ヤマトの真実」には前段で「鉄腕アトム」「鉄人28号」「エイトマン」等の日本アニメの黎明期に豊田有恒がいかに関わって来たのかが語られるのだが、この部分は「宇宙戦艦ヤマト」ファン以外にも興味を持って受け入れられるはずだ。
アニメのオリジナルシナリオライター第1号が豊田有恒だったのである。
晩年の作家活動を豊田有恒の業績の主なものととらえていた私は少なからず驚いたのであった。
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