平井和正の「悪徳学園」(角川文庫版の表紙)が発売されていました。
「アンドロイドお雪」が出たばかりなので、この勢いで角川文庫の電子化が進むのかもしれません。出版社はe文庫です。
悪徳学園
「悪徳学園」はヤングウルフガイシリーズの原型である表題小説を含む短編集です。
収録作品は以下。
- 悪徳学園
- 星新一の内的宇宙
- 転生
- エスパーお蘭
- 親殺し
「悪徳学園」は、アダルトウルフガイ「夜と月と狼(プロトタイプ)」「狼は死なず(プロトタイプ)」の次に発表された作品です。
アダルトウルフガイの「狼狩り」よりも前ということになります。
「狼男だよ」としてまとめられた三作品と同時並行して書かれたようで、ヤングウルフガイの構想は最初からあったということがよく分かります。
アダルトウルフガイが連作だったため、ヤングウルフを長編小説として育て上げたかったのかもしれません。
その後、「狼男だよ」の改竄事件、コミック版ウルフガイのスタートによって、「悪徳学園」の世界は放逐されることになりました。
ウルフガイシリーズ「狼の紋章」によって「悪徳学園」の世界は再構築がはかられ、共通の名前が当てられたキャラクター達も、よりパワーアップしています。
「狼の紋章」は読んでいるけど「悪徳学園」はまだ、という方は是非プロトタイプとして短編で発表された本作を読んでみて下さい。
「悪徳学園」のキャラクター達は後に「女神變生」の世界に転生しています。
こちらもあわせて読んでみると面白いでしょう。
女神変生 (トクマ・ノベルズ) image by Amazon
……
「転生」は内藤由紀と江島三郎の愛の奇蹟を描いた作品です。
SF的な味付けがしてあるので、純愛ではありません。
私はこの短編が大好きで幾度か涙した覚えがあります。
この作品のエイリアンのあり方などは「ゾンビーハンター」にも繫がるアイデアを含んでいて興味深いです。
……
「エスパーお蘭」は、平井和正の初期の最重要作品「サイボーグ・ブルース」にも似た傑作です。
以下のページでその面白さを紹介していました。
終わりに
平井和正は長編作家として知られているかもしれません。
しかし、初期には歯切れのよい心に響く多数の短編作品を残しています。
「悪徳学園」を皮切りに平井和正の短編が電子書籍として一般に届きやすい形になれば、再評価されることは間違いないでしょう。
今後の短編集の電子化に大きな期待を寄せています。
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